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オペラ

「小町百年の恋」

(全3幕)

​解説

<解説>

〜第1幕〜

今は昔、8世紀ごろの常陸の国。筑波山麓のある村で、男女が肩を寄せ合うような、筑波山の美しい姿を村人たちが賛美し、子どもたちはわらべ歌で楽しく遊び(児童合唱「みんなで遊ぼう」、「坊さん坊さん」)平和に暮らしている(混声合唱「筑波山」)。万葉の歌人、高橋虫麻呂は、帝の命により「常陸国風土記(ひたちのくにのふどき)」編纂のため、各地で和歌を収集する旅の途中、畑を耕す美しい人妻・およしを見かけ、一目惚れをする。村人たちは高貴な客人を祝宴でもてなすが(混声合唱「歓迎の歌」)、お目当てのおよしの姿は見当たらず、虫麻呂は恋心を一首の和歌にしたため、屋敷へと帰る。突然、平和な村に国府の役人が訪れ、防人に命じられた男たちは、愛する妻や恋人たちと別れ、一斉に旅立って行く(混声合唱「旅立ち」)。およしのことが忘れられぬ虫麻呂の夢枕に仙人が立ち、男女の出会いの場でもある嬥歌(かがい)という風習が、次の満月の夜に行なわれることを告げる。虫麻呂は慌てておよしのもとへと向かい、その晩筑波山頂で会う約束を交わし(二重唱「嬥歌(かがい)の夜」)、虫麻呂はおよしへの募る想いを和歌(アリア「男女川」)にしたためる。

 

ところが、およしは一向に現れず、夜の闇を一心不乱に登る、百歳を超えた老婆たちに遭遇する。月明かりに照らされた三人の老婆たちが、たちまち若く美しい娘に変身し、虫麻呂は仰天する。やがて、和歌を詠みながら互いを慰めあう女たちは姿をくらまし(四重唱「防人の歌」)、遥か山麓の村からは筑波山を賛美する村人やおよしの歌声が響き、夢か幻かわからず、およしへの想いだけが募る虫麻呂は、独り筑波山の頂に佇み、不思議な一夜が明けてゆく。

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